映 画

鑑賞日時/12.07.28. 18:05〜19:25
制作/イラン映画 制作年/1987年
監督/エブヒム・フルゼシュ 
脚本/アッパス・キアロスタミ 
撮影/モハマド・アラドポシュ
出演/マハナズ・アンサリアン ファテメ・アサール
アミール・モハマッド・プールハッサン
鑑賞場所/深川市・アートホール東洲館

人生の縮図

 街中のマンション。母親はまだ寝ている4歳の男児を起こして0歳の幼児との二人を留守番に置いて買い物に出る。いつものことらしい。ミルクを作って飲ませるように頼み、すぐ帰るからね、と言って出て行く。
 やっと起き上がった4歳の子モハマッドは、まず赤ん坊のミルクを鳥かごの小鳥の水飲み皿に少し入れてやり、自分も飲もうとするが、まどろっこしいので蓋を開けてゴクゴクと飲んでしまう。
 水を足そうとするが水道の栓がきつくて開けられない。赤ん坊の弟が愚図るのでおしめを替えてやろうとするのだが、上手く巻けなくてズルズルになる。戸棚の中から何かを出そうとして取り落として大きな音を出し、聞きつけた隣家の主婦が鍵の掛った玄関のドア越しに事情を聞く。この辺の経緯をユーモアたっぷりに描く。
 焦げる匂いがする、隣家の主婦が慌ててドア越しにいろいろと指図をするが要領を得ない。その中に祖母も来るのだが、彼女も鍵は持っていない。だが玄関の外套掛けに予備の鍵があることは知っている。主婦と祖母以外に全編ほとんど台詞はないのだが、この辺りはサスペンス調だ。
 その指示によって、その鍵を何とか取ろうと台になるものを運んだり棒状の物で沢山の外套類を外そうとしたり四苦八苦の末、やっと鍵を手に入れて玄関のドアを開けニッコリするところで1時間20分に亘るリアルタイムの実況放映が終わる。まさにドキュメンタリーだ。この状況を通して、未経験の困難に立ち向かう幼児の自分の力を信じて挑戦する経験の大事さと、その展開に人生の縮図を感じるのだ。