2008年11月
演 目
ゆれる車の音 九州テキ屋旅日記
観劇日時/08.11.28.
劇団名/文学座
旭川市民劇場11月例会
作/中島淳彦 演出/鵜山仁 装置/石井強司 
照明/金英秀 音楽/川崎絵都夫 音響効果/望月勲 衣装/原まさみ 舞台監督/三上博
演出補/田俊哉 制作/矢部修治 宣伝美術/田辺智子 宣伝写真/堀口宏明
劇場名/旭川公会堂

古き良き時代が懐かしい、人情喜劇

 おそらく1970年ころの九州宮崎油津。その20年ほど前、この地で権勢を振るっていたテキ屋の金丸一家は、新興の上原一家にショバを乗っ取られ、金丸一家の息子・重蔵(=角野卓造)は年老いた父親と、自分の妻・敏子(=塩田朋子)と娘・真弓(=栗田桃子)を連れて逃げのびた。
誠実にテキ屋の王道をゆく重蔵は、争いを好まぬ泣きの重蔵と呼ばれ、細々と各地の縁日を一人娘の真弓を相手に廻って歩いていた。
もう先がない父親は、死ぬまでに油津の縄張りを取り戻したいと望み、勝気の妻・敏子が引っ張る形でこの地に乗り込んで来たところから幕が上がる。
だが上原の親分・丈太郎(=たかお鷹)も老いたし、この地の鎮守の祭りも寂れた。息子の雄太郎(=柳橋朋典)も、いまはスーパーを経営してその方の羽振りが良い。
一番舎弟の児玉仙一(=鵜澤秀行)は建設業で成功し、市会議員に立候補しているし、有江孝文(=田村勝彦)にいたっては黒い筋を伝手にして何と警察官になっている。
一人娘のあさみ(=鈴木亜希子)を育てながら地元で飲み屋をやっている美人おかみの寺原しのぶ(=山本郁子)は、昔、重蔵と深い仲であったらしい。娘のあさみは重蔵の子である可能性が非常に強いことを知った重蔵は大いに慌てる。
 しのぶは懐かしく重蔵を受け入れようとするが、いまさらどうなるものでもない。
 テキ屋に憧れ、いまはスーパーで働く宏(=植田真介)と彼に特別な好意をもつ千代子(=大田志津香)が加わって、両一家のあわやという展開である。しかし事は起こらない、みんな歳をとったし若い者は新しい生活が大事だ。
流しのギター弾きをやったことがある重蔵を中心に、全員が当時流行のグループサウンズの物真似でお祭りの余興を盛り上げる。
70年代は、戦後の混乱と窮乏が終わって、落ち着いて長閑で人情味の強い良い時代であったことを笑いで映し出した2時間であった。