演 目
正しい餃子の作り方
観劇日時/08.2.28.
劇団名/北海道舞台塾演劇公演
脚本・演出/納谷真大 監修/秦建日子 照明/高橋正和 音響/奥山奈々 音楽製作/潟Wョーダウン 
舞台美術デザイン/池田ともゆき 舞台製作/FUKUDA舞台 衣装/茂住梓 宣伝美術/山田マサル 
舞台監督/渡部淳一
劇場/札幌かでる2.7

ユートピアの崩壊

 ある日突然この国に「餃子禁止法」が施行されることになった。「天の声にも変な声がある」とは、過ぎた某日ある政治家が言った言葉であるが、「天の声」で思い出されるのが宮澤賢治の『猫の事務所』であり同じく『カイロ団長』である。
『猫の事務所』は、昨今の官庁のような、あってもなくても良いような、むしろ害の方が大きいような事務所の混乱を見兼ねた獅子が、「〜もう戸籍だの事務所だのやめて了へ。(略)えい。解散を命じる」というものだし、『カイロ団長』は、労働者を搾取する団長に対して王様の新しいご命令「三カ条」が出されて、団長は失墜する。
猫たちにも団長にも救いはあるのだが、いずれにしても、この「天の声」は正義の声だ。それに対してこの『餃子禁止法』はどうなんだろう?
「餃子なるもの、孤独に作るべからず。知ったもの、知らぬもの、分け隔てなく、包み隠さず、包んでしまへ。」というのがモットーである餃子愛好者たちのサークル「チャオズクラブ」は、アマチュアの研究会のようなものだ。一種のユートピアコミユニティであるらしい。
彼らは突然の禁止令に大慌てで最後の餃子パーテイの準備をする。ところが同じ思いの人が大勢いるらしく食材の肉と野菜がなかなか手に入らない。
その大混乱を描き、苦心惨澹の挙句やっと準備ができた時は15分前、そこで突然停電するというご都合主義の話である。まったく罪のない人たちのささやかな理想郷をなぜブチ壊すのか? 「天の声」にどういう正義があるのか? 昨今の世の中のあらゆる局面に見られる矛盾を告発するものだ。
最後に自転車を三台並べて発電して、その電力でホットプレートを作動させようというむちゃくちゃな必死の努力が切なく哀れであり、この集団の祈りのようなものであろうか?
作者・納谷がいう「〜初めて観た劇が『つまんなくなく』て『難しくない』もの」というコンセプトを重視したせいか、いささか次元の低いギャグなどが連発され、中学生以下無料の子供たちがゲラゲラ笑っていたのには少々閉口した。
作者は同時に「劇を見慣れた方々、ゴメンナサイ」「お客様全員に面白いと思っていただくのが見果てぬ野望でございます」とも述べているが、さてどうでしょうか?
出演は、飯野智行・江田由紀浩・大川啓介・黒岩孝康・小島達子・武田晋・浅野幸子・飛世早哉香・
長谷川奈緒美・丸田美沙子・山田マサル・渡辺舞・和田雅信。


 2月の推薦舞台 

今月は二つだけにする。
 
☆ 夢の人      ケイダッシュ・ステージ

☆ 腐食       Theater・ラグ・203 水曜劇場